こぼれ落ちる、那唖挫の涙を、伸の唇がぬぐう。
今、伸は、また後ろから那唖挫の細い体を抱きしめて、何度も何度もその頬に口付けている。
「食べちゃいたいほど可愛いって、こういうのを言うんだね。」
誰にともなく、小声でそう言う伸。
そう言うと、彼は那唖挫の耳に軽く歯を立てた。
那唖挫の白い体が眼に見えて震える。
もうその反応は、那唖挫の置かれている状況によるものなのか、それとも当麻の改良した媚薬によるものなのか、判別がつくものはいない。
(わかんねえ…)
当麻自身が、そう思っている。
それよりもはっきりと分かっているのは、今の自分が、これまでの人生のいつよりも、“発情”しているということだった。
智将として常に自分をコントロール下に置いておく事が半ば習性になっている自分が、今にも欲のままに暴走しそうになっている。
ということは、伸も自分と同じかそれ以上の欲望を抱えている事だろう。
伸が今、那唖挫の滑らかな皮膚を撫でまわし、時折つねるようにしてはこねまわすのがその証拠だ。
それに対して那唖挫は何度も体を痙攣させながらも伸の腕に束縛されている。
―――極限まで抵抗していたものが、自らの手によって堕ちた光景。
そこまで自分達で追い込んで、それを最初から最後まで見届けてしまったのだ。
体も頭も否応なしに興奮する。
(食べちゃいたいほど可愛い、ねえ…)
伸だからそういう言い方になるのだろうか?
当麻なら違う言い方になる、と自分で思う。
だが的確な言葉がここまで熱くなった頭では思い浮かばない。
あるのはもっと嗜虐的で破壊的な欲求。
那唖挫に対する愛情は愛情として確かにあるのだ。
可愛いという感情は、読んで字のごとく、明らかに愛を含むのだから。
だが、それなのに、何故そこにこんな感情―――“自ら叩き壊して堕としたい”とでも言うべきものが含まれるのか。
(わかんねぇな…)
感情というものは常に無限に変化しつづけ、それを一つずつ定義づけるのは不可能なことなのだろう、と当麻は噛み締める。
それこそ四百年の時を越えて生き、自分と並ぶほどの知識を持つ那唖挫に聞いたみたいものだ。感情のプラスマイナスと欲望の0と1の境はどのへんにあるのか、と。
「那唖挫、また体が熱くなってきてるよ…」
そう囁きかけながら、伸が何度も那唖挫のウナジに手と唇を這わす。
那唖挫は辛そうに眼を閉じながらそれに耐えている。
「すまんな、那唖挫。」
その彼の前にしゃがみこんで、当麻が言った。
「ほんと悪いんだけど…お前見てたら、もうオサマリがつかなくなっちゃったんだよね。だから、もう少しだけ、付き合って。」
勿論、“もう少し”ですませるつもりなどなかった。
それを那唖挫も悟ったのだろう、涙の浮かんだ眼で当麻を見上げてくる。
だが、そこには、伸に向かって拒絶の言葉を吐いたほどの強情さはない。
切なげに眉間を寄せて、薄く開いた唇から絶え間なく喘ぎ声を漏らしながら、那唖挫が当麻を見つめている。
当麻はズレた那唖挫の眼鏡をその手でかけなおさせる。
そのまま、那唖挫の頬を指先で支えると、口を近づける。
那唖挫はもう抵抗しない。当麻のなすがまま、そのくちづけを甘受する。
当麻が舌を差し込むと、那唖挫の舌は逃げるように引っ込んだが強引に捕らえ、嬲ると微かに応えてきた。
絡み合う唾液とぬるい滑らかな舌先。
歯を立てるようにして舌を吸い上げてから、当麻は那唖挫から唇を離した。
「舌、柔らかいんだな。那唖挫。」
息を止めていたらしい那唖挫はただ胸から息を吐いている。
「妬けるね、あまりそういうことしないでよ、当麻。」
そう言って、伸は那唖挫の体をさらに自分の方へと抱き寄せた。
そのまま体の向きを変えさせて、自分がまだ当麻の唾液にまみれた那唖挫の唇に唇を重ねる。
「ん、う……」
息が苦しいのだろう、那唖挫がうめく。
那唖挫の震える爪先が、伸のスーツの胸を引っかいた。
やめてくれ、というように。
だが伸は那唖挫の未だ十九歳の細い体を強引に抱きしめて唇を嬲り続ける。
先ほどまでは歯を食い縛っていたはずの那唖挫だったが、今はたやすく伸の舌の侵入を許し、口の中を舐めまわさせている。
まるで当麻のキスをかき消すかのような激しい接吻。
その苦しさに、ほとんど本能的に伸の体を押しのけようとした那唖挫の白衣の引っかかった腕を、伸の壮健な腕が押さえ込むように抱きしめる。
「ふぅ…ん……っ……ぁ……」
今、那唖挫の爪は、伸に抵抗するためにその胸を押しているのか―――それともその逆か。伸の胸に、縋りついているのか。
「はっ…ぁ……」
ようやく口を解放され、那唖挫が激しく喘いだ。
その背中をさするようにして伸がその白衣ごと那唖挫を抱きとめる。
「少し、当麻の味がした。悔しいね。」
対する伸は穏やかな口調で那唖挫の体をあやすように撫で付け続けた。
「前から思っていたけど、伸、お前、独占欲強すぎ。三人でやるって決めた時点で、当然の結果だろ。」
笑いながら揶揄する当麻。
「しょうがないことじゃない?僕は、独占欲は愛情の本能みたいなものだと思ってる。本能は体の一部、責められる事じゃないよ。」
「へえ、そういう考え方もあるもんかね。」
本人がそう言いきっているものをこれ以上からかうのも気が引け、当麻は那唖挫の乱れた着衣に手を伸ばした。
乱れに乱れきった柳色の長着と、汚れて皺のついた白衣。
肘から引っかかり、辛うじて膝の辺りまで覆っているそれをめくり上げる。
最初、爬虫類、それも白蛇のようだと思った那唖挫の脚は、羞恥と欲情の火照った色に染まっていた。
その脚を、舐めるような手つきでゆっくりと撫で上げて行く。
白蛇、というのは外見だけの話でその肌は滑らかにしっとりと吸い付いてくるような手触りだ。精神は四百五十年の時を越えていても、肉体は十九歳、成人すらしていないのだから当然だろう。
そこにあるほのかな熱を確かめるように、何度も撫でさする当麻。
「んっ…はんっ……」
伸の胸に爪先を立てながら、那唖挫が下を向いてうめく。
当麻に脚を撫でられているだけで、そんな声を立ててしまうらしい。
「感度のよさは抜群だな。」
思わずそう声に出して言ってから、当麻はもう片方の手を脚の上へと手をもぐりこませる。
媚薬と二人分の男の白濁を注ぎ込まされたその部分。
そこへ、人差し指と中指を探りこませ、上から軽く押した。
「ひゃっ……!」
那唖挫が、明らかに伸の胸にしがみついた。
それは反動によるものなのだろうが、伸がすかさず那唖挫の頭を抱き寄せた。
「大丈夫だから、ね、那唖挫…」
押しただけで、那唖挫の窪みからじわりと液体が零れ落ちてくる。
片手で白衣をめくりあげられているのだ。その光景は当麻の目にははっきりと見える。
充血してほぐれきったその一ヵ所から流れ出てくる、注ぎ込まれた欲の証。
それが開かれた内股を伝いながらゆっくりと、リノリウムの床に落ちた。
押したり、引いたり。
当麻の指は上から触って行くだけで、那唖挫の中には入ろうとしない。
那唖挫は伸により腕を封じられ頭を抱きかかえられた格好で、当麻の指と視線に対してただ震えている。
「ん、これならまだ、大丈夫だな。」
当麻がそう言って立ち上がる。
「どうしたの?」
伸が顔を上げて聞いた。
「これ。」
取り出したのは先ほど使った媚薬ジェルのチューブだった。
「…何?」
「那唖挫を狂わせる毒薬。」
そう言って数度、チューブを振って中身を栓の方へ寄せる。
「天、空……」
振り返る那唖挫の目尻に浮かぶ涙。
その那唖挫の自分の胸にある手を、伸の大きな手が掴んだ。
そのまま床に那唖挫の手をおろさせる。膝は既に床についている姿勢だ。
伸が那唖挫の頭を更に下に押した。四つん這いのまま、腰を突き上げる格好。
「……っ!」
条件反射で起き上がろうとする那唖挫。それを伸が手と腕で制する。
そのめくりあげた白衣の下の窪みへと、当麻がチューブの口を直接押し当てた。
「つ、めた…ぁ……っ!」
ほぐれた部分に直接注入されるひんやりとしたジェル。
那唖挫が悲鳴を上げる。
本来ならば入れるために使用される器官ではない部分に強引にチューブの口を押し込み絞り込んで行くのだ。当然ながらその部分からは侵入できなかったジェルが次々にあふれ出てくる。
更に火照った体の内部で半ば溶けたジェルが那唖挫の白い腿を伝う。
それにも構わず、当麻は何度もチューブを絞り上げた。
じゅるじゅる、と音を立てるチューブとそれよりも卑猥な音を立てる那唖挫の窪み。
白濁と粘液が混じりあいながら窪みからあふれ出るのを凝視する当麻の青い眼。
そのあまりにもえげつない行為が終わった時には、那唖挫は完全に抵抗する気力をなくし、床の上に白衣を引きずりながら倒れ臥した。
菓子から摂取された媚薬は、消化を待つ訳だから遅効性だったが、直腸から直接注入される媚薬は即効だ。
それを一気に、大量に注ぎ込むというのはどういう結果を生むだろう。
「う……あぁ………はぁ、んっ………」
ただ小刻みに震えていただけの那唖挫の体が、目に見えて悶え始めた。
白い腕が、脚が。
研究室の床の上で、あられもなくのたうちまわる。
白から薄色に染まっていた皮膚は桜色に変わり、欲情に巡る血の力により次第に薄桃色へと変化していく。
白衣の袖が今にも抜け落ちそうなほど苦しげに、宙をかく、那唖挫の手。
「やりすぎ、じゃない?」
わずかに戸惑ったような声で、伸が言った。
その間も、足元で那唖挫は微かな悲鳴を上げつづけている。
「お前には言われたくないよ、伸。」
そういう当麻の声はあくまで冷静。
しかし、それは智将としての習性がなせる技にすぎない。
悶え苦しむ那唖挫の蒼の眼からはとめどなく涙が流れ落ち、数度も放ったはずの雄はまた痛々しく首をもたげている。
そして腿全体を伝う、溶けかけた透明のジェル。
「当麻の媚薬の効果、凄すぎない?」
荒い呼吸の中に途切れ途切れの聞こえる、こらえられるはずもない喘ぎ声。
「はっ……あぁ……てん、く……ぅ……あっ……」
その眼鏡の奥、怒りと矜持に研ぎ澄まされていたその蒼の両眼に、今、灯るのは―――淫欲。
ひたりきった欲望。
欲しいままに、とめどなく、那唖挫が欲するものは―――
「僕の名は呼んでくれないの?那唖挫。」
その那唖挫の悶え苦しむ指先が、伸の指に絡め取られた。
その指が、くつろげられた伸の前へと導かれる。
「ほら、君の欲しいものだよ。」
那唖挫がうつむいて眼を閉じる。
しかし、その指先は伸の昂まりから逃げようとはしない。
爪が、小刻みに震えて。
全身が、がくがくとわななき続けて。
体が欲望に震えるたびに、腿から透明の液が零れ落ちて。
「ほら、那唖挫―――」
促す伸の声の凶悪なる優しさ。
先ほど那唖挫自身を握らせた手で、今度は自分自身を握らせる伸。
「ンっ……くぅ……」
何かをこらえるように那唖挫は朱色に濡れた唇を噛み締める。
しかしそれも束の間の事。
すぐにその唇は解けて、熱い吐息とはしたない声を迸らせる。
「もういらないな。」
その那唖挫と伸を見守りながら、当麻は片手のチューブを汚れたソファの上に放り投げた。
チューブはほとんど、空になっていた。
「す、い……こっ………」
「―――何?」
那唖挫の指が、伸の雄をたどる。
人差し指、中指、薬指が順繰りに幹を辿って行き、親指が絡まる。
残された小指は手のひらに縮こまっている。微かに恥らうように。
そのまま那唖挫の動きは止まった。
伸は微笑みながら黙って待っている。
那唖挫の手を握っていた伸の手は、また何度目かに那唖挫の緑の髪を撫で付けていた。
「……ふっぅ………」
一つ大きく息を吐いて、那唖挫の指が伸の雄を刺激し始めた。
くねる白い指、爪を立てない繊細な動き。
やがて濡れ始めた伸の先端のぬめりを引き伸ばすように親指と人差し指を使い、中指と薬指で幹を扱き立てる。それは明らかに男に慣れきった手管。
螺呪羅や悪奴弥守との関係を、完全に那唖挫が認めたようなものだ。
「上手だね、那唖挫。でも、もう片方の手も、使ってごらん。」
荒い息を吐きながら、伸がそう言った。
床に落ちていた手が動く。
ためらうようにスーツの脚を掴み、その後、伸の雄へと。
両手の指で一本の雄を覆うようにしてこすり立てる。
伸と、那唖挫の動作、呼吸、それらがつながりあい、絡み合って行く。
「手を休めるなよ。」
そこに、当麻が平静の声でそう言った。
「……?」
後ろに立っていた当麻を振り返ろうと那唖挫が首を動かした刹那。
鋭い痛みが、双丘を割り広げた。
「―――!!」
一体、今日何度、感じた痛みなのか、それは。
当麻の挿入により、那唖挫は声を出す事も出来ず、体を前のめりに倒した。
それでも、言いつけどおりに伸の雄から手は離さない。
当麻の声は平静。その表情も冷静。
しかしそのリズミカルな動きはジェルにまみれ塗り潰されたその部分でさえ痛みを感じるほど大きく激しい。
最初の激痛を何とか息を止める事でやり過ごし、辛うじて呼吸の自由を取り戻すと、那唖挫の口からは途切れ目なく声が漏れ始めた。
「あ……ぁあっ……はあぁ……あっ……あぁ!!」
那唖挫の喘ぐ声は次第に甲高く跳ね上がり、研究室の中に響く。
それにも構わず、当麻は更に那唖挫の内部を荒々しく突き上げ、抉り立て、かき回す。
その動きには何の遠慮も呵責もない。
ただ自分の思うがままに、那唖挫の中に欲望を叩きつけているだけだ。
「やぁあっ……はぁ……んんっ……あっ、ぁあ……!!」
その律動にこらえきれず、那唖挫はただ伸の雄を掴んだまま、悲鳴のように声を立て続けた。
「ほら、那唖挫、手が休んでいるよ。」
「さぼるなよ、那唖挫。」
身勝手な男二人の言い分。
しかし、それは那唖挫に聞こえてはいるかどうか怪しいものだ。
大量の媚薬による熱と男に貫かれる熱の相乗効果に耐え切れるものなどそうはいない。
いくら妖邪界の魔将であっても。
「ふっ……うっ……」
那唖挫の眼鏡の奥から涙が流れ落ちる。
火照った頬を伝う滴。
それを伸の手が優しく拭い取り、そのまま、また髪を愛撫しはじめる。
その時、当麻がついに那唖挫の弱点を探り当て、そこを刺すように攻撃した。
「あああっ………!!」
那唖挫が喉をのけぞらせる。
「ああもう、外に聞こえちゃうよ。」
苦笑する伸。
途切れる事のない嬌声とジェルの中をかき回す当麻の淫靡な音。
それにかぶさる伸の穏やかな声の違和感は却って淫猥な行為のきわどさを知らしめるかのようだ。
伸は左手で那唖挫の右手を取り、自分のモノをしっかりと掴ませる。
「ちゃんとやって。」
その声に従い、那唖挫の右手が動く。
先ほどの滑らかな動きとは違い、たどたどしく、拙いのは、後ろからの責めに、那唖挫自身が耐え切れなくなっているのだろう。
当麻は的確にその一点を突き上げてくる。
もうそれだけで達してしまいそうなほど痙攣している那唖挫の雄。
それでも、伸は左手で那唖挫の右手を促す。
何とかそれに応えようと、那唖挫は指を蠢かす。
その爪先さえ薄桃色に染め上げながら。
「うまく行かないねえ…」
雄を猛らせながらもため息混じりに言って見せる伸。
「伸。口。くわえさせてやれ。」
そこに当麻が簡潔にそう告げた。
「やっ!」
やめてくれ、と言いたかったのだろう。
そう言いかけて開かれた朱色の唇の中に、伸が指を突っ込む。
閉じかけようとする口を無理矢理にこじ開けて、自分の雄をあてがう。
「ンン……!」
鼻に詰まった那唖挫の悲鳴。
その独特の匂いのする猛ったモノをその口の中に入れられる。
那唖挫の蒼い眼から涙が零れ落ちる。
苦しいのだろう。
だが、同時に、加えられているのはまぎれもない快楽。
後ろから圧迫してくる、切り裂くような痛みと同時に、内部の弱点を性格に抉るように突き立てられているのだ。
繰り返される律動の度にその体の芯へと刺激される甘い痺れは、那唖挫の精神までを確実に犯して行く。
「ンっ…ンクっ……!」
那唖挫の喉が、動く。
濡れた頬、髪を始終撫でる伸の指。
那唖挫は自分から伸自身を全部飲み込もうと顔を前に出して行く。
伸の裏筋を舐め上げる舌。
緩急をつけて締め付けてくる口腔。
それは稚拙とは言えない。むしろ逆だ。
伸の顔が次第に欲望の色に染まって行く。
「本当に、こういうの、上手なんだね、那唖挫。」
涙に濡れていく那唖挫の顔をいとしんでいた伸の掌。
それがしっかりと那唖挫の耳のあたりを両手でつかんだ。
「!!」
那唖挫の口の中に、激しく己をぶつける。
その衝動は恐らく怒り。
自分で那唖挫に淫行を強いて置きながら、それにあまりにも慣れすぎている那唖挫への、理不尽極まりない悲憤。
いまや那唖挫は体の入り口と出口を二人の男に封殺され、自身も媚薬によって強制的な淫欲に翻弄されながら、ただ交互に揺さぶられている。
その白く細い体には、痛ましいほどの衝撃と刺激。
しかし快楽原則によって那唖挫の体は逃げるようにもがくでもなく、右手は伸をつかんだまま、脚は当麻を受け入れるために開かれたまま。
快楽原則。
それは無意識的であり衝動的なもの。
今この場でその<快楽>という原則に逆らえるモノなどありはしない。
当麻も、伸も、那唖挫も、その快楽の頂点へと他者によって自分を高めて行くだけだ。
視覚に来る。煽るためだけに引っかかっているような白衣と長着、薄桃色に火照った白い皮膚、唇、指、濡れた頬、ぬめる脚。
絡みあう三人の吐息の音。犯された唇から零れ落ちる唾液の音。後ろを抉る規則的な叩く音。リノリウムに落ちて行くジェルの滴り。
室内にみちみちている男、雄、それ自体の匂いが、柑橘類を思わせるジェルの匂いと混ざり合い、それも刺激となって新たな匂い―――汗の匂いを呼び起こす。
そうした一つ一つの条件がお互いに混ざりあって体内で咀嚼され、更なる刹那、快楽へと、三人を求めさせて行く。
「んぅ……ぐっ……ぅ………」