蛇も19、ケーキに媚薬

「久しぶりだね、那唖挫。元気そうで嬉しいよ。」
 スーツ姿で現れた伸の姿に、那唖挫はもう何も言えなかった。
「誕生日プレゼント、喜んでくれた?ああ、言い忘れたけどおめでとう。」
 にこやかに笑いながら、伸が那唖挫の横たわるソファに近づいてくる。
 一体、何年ぶりの再会なのか、那唖挫はもう覚えていない。
 しかし、少なくとも白衣と着物を中途半端に剥がれた挙句、媚薬ジェルをぶっかけられ白濁を注ぎ込まれた姿を、かつての宿敵に晒す事になろうとは。
「……貴様、本当に、俺が喜ぶと思っているのか?」
 精一杯、睨みつけながら那唖挫が言う。
「僕はとても嬉しいけれど。」
「先に食っちゃっていいって言ったから、食ったけど、よかったのか伸?」
 満面に笑みを浮かべていた伸は、当麻に言われて、突然不機嫌そうな顔になった。
「そりゃ、当麻がどうしてもって言うからさ。確かに、当麻一人の方が那唖挫を油断させられるから、同意したけど、ちょっとやりすぎじゃない?こんなにドロドロにするなんて。やっぱり僕も最初から参加したかったよ。」
 勝手な事を抜かす小童二人に、那唖挫は再び怒りが込みあがってくる。
 しかし、体が言う事を聞かない。
 息が切れ、胸が苦しく、何よりも体の芯が熱く火照ってどうしようもない。
「でも、さすがに当麻だね。薬の効き目は抜群なんじゃないの。」
 そう言って、伸が那唖挫の汗ばんだ顔をそっと撫でた。
「触るな…!」
 何とか顔を背けようとする那唖挫の顎を掴んで眼鏡の奥を伸は凝視する。
 那唖挫の目元には微かに滲んだ涙の跡。
 それとともに、隠し切れない欲情の炎。
「言っている事が、逆だよ、那唖挫。」
 そう言って、伸は微笑む。それはそれは優しく。
「さっきからそうなんだよ、那唖挫は。素直じゃないんだ。そこがまた可愛いんだけどさ。」
 当麻が頭をかきながら言った。
 その言葉に頷きながら伸は手を、那唖挫のソレに結ばれているリボンに伸ばした。
「本当に可愛いね…このままもっときつく、縛っちゃおうか。蝶結びなんて、いいかも。」
「ああ、いいねえ。」
 当麻が賛成した。
「な、何を言っている、貴様ら、ふざけろ!変態どもが!!」
 そう言って身を捩って那唖挫が抵抗する。
「ああほらほら、暴れない。イイコにしてって言ってるだろ?」
 それを当麻がソファに乗っかり横から羽交い絞めにして動きを完全に封じてしまった。
 伸の指が那唖挫に伸び、くるくると巻き付いていたピンクのリボンを一旦解くと、そのままもう一度結びなおす。
 きつく、しっかりと、可愛らしい蝶結びに。
「………!!」
 もう屈辱や恥辱を通り越した感情に、那唖挫は悶絶しそうになる。
 言葉も出さずに震えている那唖挫の頬に、伸は軽く口付けた。
「ケーキだけじゃなく、那唖挫の事も飾れるなんて思わなかった。色々選んだんだけどね、もうちょっとフリルやレースがついていた方がよかったかな。」
 そう言いながら、伸は那唖挫の頬を何度もなでた。
「眼鏡、似合うね。当麻が選んだんだっけ?」
「ああ、那唖挫は細いし白いし、賢いから。こういうアイテムが映えると思って。見ていると萌えるんだよね。目の保養、目の保養。」
 PCの入力続きで眼が疲れる、と那唖挫が一度こぼした際に、当麻が即座に買ってきたのが眼鏡である。てっきり、眼に優しいからだと思っていた那唖挫だった。
 それがまさか、ただの萌えアイテムだったとは…。
「研究も楽しかっただろうね、当麻は。僕は滅多に那唖挫に会えないから…。会いに来て欲しかったんだよ、那唖挫。ずっと。」
 そう言って、伸は那唖挫のウナジに舌を這わせる。
 それだけで全身に甘い痺れが走り、那唖挫は必死に声を殺す。
 媚薬の効き目は消えるどころかますます増してきているようだった。
「どんなに顔に出さないふりしても、体は正直だよ。……発情した汗の味がする。本当は、嬉しいんでしょ?こういうことされて」
「………っ!」
 反射的に伸を突き飛ばそうとする那唖挫の腕を、当麻が後ろから止める。
 伸は那唖挫の反応を気にせず…というよりも、楽しみながら、首筋からじわじわと肩の方へと唇をずらしていった。
 その動きに那唖挫は息を荒げ、手足をびくびくと動かした。
 頭がどんなに小童二人を拒絶し拒否しても、当麻の盛った媚薬の前に、体が屈してしまっている。
 その証拠に、先ほどまでの当麻の口淫で雄はたぎったまま。
 伸はそこを見て笑うように眼を細め、那唖挫の着物をわずかにずらすと白く汗に滑る皮膚に吸い付き始めた。
「や………っ!」
 声が、漏れる。
 何とか、否定したい。
 何とか、拒絶したい。
 それなのに体が暴走していくのを止められない。
「痕つけたら、怒る?螺呪羅や悪奴弥守にバレたら怖い?」
 後ろから当麻がからかうような声で言った。
「そう、じゃ、な……っ!」
 その発言で、脳裏に魔将二人の事を思い出し、那唖挫は動揺する。
「あ、別に構わないんだ。じゃあ、俺も。」
 そう言い放つと、当麻は背後から那唖挫の白衣と着物を肘まで下ろし、首から背中にかけてツツツと舌を滑らせた。
「ひゃあっ………!」
 那唖挫が背中を弓なりにそらせる。
 間髪いれずに伸が那唖挫の胸に軽く歯を立てる。
 そのまま前後から絶え間なく、与えられる快楽の攻撃。
 当麻と伸が那唖挫の白蛇のような皮膚をかわるがわる、舌で舐め、歯で甘く噛み、唇で吸い上げる。
白い皮膚に残される情交の痕はあまりにも煽情的だ。
それが却って責める男たちの行為を激しくしていく。
よって那唖挫の雄はピクピクと震え、先端から、物欲しげな雫をこぼし始めた。
 しかし、ピンクのリボンで縛られているために達する事が出来ない。
 勿論、那唖挫自身から、それをほどいてくれと懇願することなど出来るわけもない。
 理性とプライドを振り絞り、那唖挫は自分の快感を殺し続ける。
それでももれる、声、音。
 それは妖邪界を制する毒魔将の、羞恥と屈辱に満ちた悲鳴。
那唖挫の耐え切れずに発する喘ぎ声に、次第に当麻と伸の荒い息が混じり始める。
「限界近いんじゃないか…伸。」
 先にそう言ったのは当麻だった。
「当麻だって。」
「俺はさっき出したから。伸、先にいいよ。」
「そう?」
 はにかんだように伸は笑った。
「遠慮するなって。」
 当麻が促す。
「何…言ってるか、貴様、らぁ……!」
 二人の会話の余りの身勝手さに、那唖挫が引きつった声で抗議する。
 しかし、その上ずった余裕のない声は攻める二人の欲情の引き金を引いただけだった。
 伸の手が那唖挫の膝に伸び、ほとんど限界まで大きく開かせる。
「!!」
 反射的に脚を閉じようとする那唖挫の膝の間に体を割り込ませ、そのまま手を使って腰を浮かさせる伸。
 後ろから当麻が那唖挫の体を支えてそれを手伝う。
「や、やめ、やめろぉ!!」
 思わず叫ぶ那唖挫。
 かつての宿敵・水滸のシンの眼前に、隠しておくべき部分が全てさらけ出される。
 しかも、その部分から滴り落ちるのは先ほど注ぎ込まれた男の液。
「……ぁあ……。」
 泣き声とも喘ぎ声ともつかない音が那唖挫の口から零れる。
 そこを見つめる伸の視線は、舐めるようで、食い入るようで、それだけで那唖挫は死にたくなりそうだった。

wavebox


↑よろしければ一言どうぞ! 励みになります(*'-'*)