那唖挫の体が目に見えて引きつる。
「そうびくつかなくていいって。那唖挫が暴れなけりゃ、優しくしてやるから。」
無理矢理、余裕ぶっこいて見せながら、当麻は那唖挫の奥に那唖挫の液体を塗りこめていく。
「ン……う……。」
その異物感に思わず那唖挫が声を漏らした。
「何?那唖挫、これ感じるの?」
「くぅ……あっ……。」
侵入してくる指の動きに、那唖挫の全身は明らかに反応していた。
白い皮膚は火照り、汗ばみ、小刻みに震えている。
革張りのソファの上に突き立てられた、整った爪先。
当麻の指一本で揺れる背中。
「やっぱねえ…そうじゃないかと思ってたんだけど、那唖挫、螺呪羅や悪奴弥守とこういうことしてんだろ?戦国時代ったら男色が盛んだったんだもんなあ。」
「ふ、ざけ……やが…ぁ……。」
罵りたくても体に加えられる刺激のために思うように声が出ない。
そんな那唖挫を楽しみながら、当麻は那唖挫の奥に人差し指を突き刺した。
「うぁ……!」
那唖挫がソファをかきむしり、体を丸めるようにして耐える。
「そんなに硬くなるなって。こんなの、慣れているのと違う?それとも、俺だから?」
あくまで軽い調子で問い掛けてくる当麻。
那唖挫は声を立てずに、ただ荒く息を吐き続ける。
「力、抜けよ。イタイツライは嫌だろ?」
しかし、那唖挫は媚薬に抵抗するように、全身を強張らせて当麻の指の侵入を拒む。
「あのさ、那唖挫、そんなに意地張ると、俺もそれなりのことしなきゃなんないんだけど。」
「……何を……。」
嫌な予感がして、思わず当麻を振り返る。
当麻は雑然とした研究室の中から、見慣れないチューブを取り出してきた。
「まさか…。」
ソファの背に体を寄せる那唖挫に構わず、当麻はチューブの蓋を開けると、中の液体を那唖挫の尻に振りかけた。
「ひゃっ!!」
その冷たさに思わず悲鳴をあげる。
「これ、さっきの媚薬入りのジェルね。あ~、いざという時のために作っておいてよかった。何事も念には念を入れないとね。」
そう言って、那唖挫の尻からその窪みにかけて白みがかったジェルを塗りたくる当麻。
「や、やめろ…馬鹿!死ね!殺す!貴様、絶対殺す!!」
そう叫ぶものの、直腸から入ってくるジェルの媚薬効果に叶うわけもない。口から摂取しただけでも、あれだけ感じていたのだ。
「物騒だなあ。せっかくの誕生祝いだって言うのに。」
「こんな祝いがあるかボケー!!」
そう叫ぶ、那唖挫の窪みに、当麻はいきなり二本の指を挿入した。
「あぁ……んっ………。」
螺呪羅とも悪奴弥守とも違う、今まで知らなかった男の指先を内部に感じる。
その、指が、自分の弱い一点を少しずつ探るように動いてくる。
今にも暴走しそうになる自分の欲望を必死に制御するために、那唖挫は自分で自分の指を噛んだ。
「ふっ……うぅ………。」
ここまで加えられた快楽に対し、無駄だと分かっていても何らかの抵抗はせずにいられない。
「ん~、だいぶほぐれてきたかな。もう凄いぬるぬる。」
わざわざ説明してくる当麻に、那唖挫は鋭い視線を投げかける。
「そんな眼、しなさんなって。余計に煽られるから。」
実に楽しそうに笑う当麻。しかし、その顔が紅潮し、わずかに息が上がっているように見えるのは気のせいか。
「聞こえるだろ、この音?スゲーやらしい。那唖挫の中から、溶けたジェルがどんどん出てくる。どう思う?自分の体の中で、毒が溶けるってどんな感じ?」
「……最悪だ……っ!」
自分の内部の熱でただでさえひんやりとしたジェルはぬるみ、それが当麻の指との摩擦で恐ろしく卑猥な水音を立てている。
そしてじわじわと内部から広がる、熱い感覚。
それだけではなく、聴覚からくる水音の刺激にすら那唖挫の体は反応し、一度放ったばかりなのにも関わらず、雄はゆっくりと首をもたげていた。
「じゃあ、そろそろかな。」
恐れていた、その一言。
ここまでされれば、来るとは思っていたものの―――。
「貴様のような…小童ごときに……っ!」
「いいねえ、その悔しそうな顔。本当にツボつくの巧いわ、那唖挫。」
そう言いながら、当麻はソファの上に乗り、那唖挫の腰をグイと引き寄せた。
そして、自分のズボンの前をくつろげる。
「よ、よせ!やめろ!ド阿呆!」
姿勢的に、見えるわけではないが、ジッパーをおろす音で状態を悟った那唖挫は、体が動けない分、そう怒鳴り散らす。
「あっさり罠にはまったド阿呆はどっちだよ。」
台詞はからかうようだが、当麻の声には熱っぽく荒い息が混じっていた。
その当麻の先端が、溶けたジェルに塗れた那唖挫の窪みに押し付けられる。
「………ッ!」
その感覚。そしてこの後訪れる事態を予測して、那唖挫は歯を噛み締めソファの革に爪を立てる。
その那唖挫の姿に体の芯が痺れるような熱さを感じながら、当麻はゆっくりと己をねじ込み始めた。
「くっ、う……ぁあ……!!」
いくら慣らしているといっても、本来なら排泄の部分にたぎった男を受け入れさせられるのだ。
押し殺した悲鳴が那唖挫の口から漏れる。
(那唖挫に、突っ込んでいる…)
その声に、無理矢理入れている自分を更に深く自覚する。
まるで、自分まで媚薬に狂ったような欲の感覚に煽られ、当麻は一気に那唖挫を貫いた。
「あっ……!」
途端、那唖挫が背中を反り返らせる。
「ありゃ、いいとこに当たっちゃった?」
後ろから耳を舐めるようにして聞く当麻。
「そんな、わけ……あるかっ……!」
そう言いながらも那唖挫の雄は充血して濡れ、硬直しきっている。
先をぬめらせながら立ち上がっている那唖挫の雄。
そればかりではなく、全身から汗が噴き上がり、当麻の塗りたくったジェルと混じり合って、体に引っかかっている白衣を汚す。
「ここ、こんなにしていても、そんなこと言えるもんだなあ。」
当麻が那唖挫の雄を再び握りこむ。
「だ、から……さわ、る……なぁ……!」
握られただけでもう達してしまいそうになるぐらい感じてしまい、那唖挫は上ずり跳ね上がった声で叫んだ。
「逆だろ?触って欲しいくせに。もっと全身、いじくり回して欲しいんだろ。正直にそう言えよ。」
言い返そうとする那唖挫だったが、当麻が激しく那唖挫自身をしごきたてはじめたために、何もいえなくなった。
唾液に濡れた唇から発するのはもうあられもない喘ぎ声のみ。
それと同時に、那唖挫の内部は快楽に応じて収縮を繰り返し始めていた。
頭でどんなに拒絶しても、元々魔将同士で繰り返してきたこの手の行為に、体自体が慣れきっており、入ってきた当麻の雄に自然に順応してしまったのである。
当麻を襲う、熱く締め付けてくる肉壁の感覚。
「すげ…。」
思わずそう呟き、当麻はソファの上で体を動かし始めた。
最初はゆっくりと。次第に激しく。
那唖挫の中を抉るたびに、呼吸が早まり、動悸が苦しくなる。
女相手では得られない、キツイ締め付けと、どうしようもない背徳感。
「クソ……ガキが……貴様、などに……はぁ……っ。」
もう限界なのに自分を罵ってくる、途切れ途切れの那唖挫の声。
その声に、キレた。
思わずその白く細い全身を自分の方に思い切り抱き寄せ、当麻は那唖挫の中に自分の欲望を思う存分解き放った。
「んあぁ……っ!」
流れ込んでくる、熱い液体。
その衝撃と、自分の中に男が放たれたという感覚で、那唖挫もソファの上に快楽の証をぶっかけてしまった。
「……………。」
自分の放った液体を見て、那唖挫は絶句する。
ほとんど間をおかず、二発。
その事実に那唖挫は呆然とするしかない。それだけ、当麻の作った媚薬の威力が凄いという事か。
それとも、自分の中に当麻に対する何か欲望のようなものがあったのか。
どちらにしろ、それは毒魔将としてのプライドを刺激して余りあった。
背後では当麻が盛大に深呼吸をして余韻に浸っている。
「もうよかろう!いい加減離れろ!気持ち悪い!!」
情けなさを怒りでごまかして那唖挫が怒鳴る。
「んー、もう一発!」
気持ちよさそうに当麻が言った。
「ほざけ阿呆!本当にやったら今度こそ武装するぞ!!」
もう羞恥なのか激怒なのか媚薬の効果なのかわからないほど顔を赤くして那唖挫が怒鳴る。
「分かったよ、しょうがねえな。」
当麻はそう言って、那唖挫の内部から自分を引き抜いた。
「ンっ……。」
それにすら感じてしまい、那唖挫が小さく声を震わせる。
二度も放ったはずなのに、媚薬の効果はまだ体に残り続けているらしい。
那唖挫は己の微熱と激しい呼吸、鼓動を制する事も出来ないまま、ソファの背にもたれかかった。
そのしどけない姿に、当麻は思わず生唾を飲み込む。
自分も欲望を放出したばかりなのにも関わらず。
濡れた白い皮膚に、性懲りもなく手を伸ばす。
「ばっ……貴様、まさか、まだ……っ!」
それに、ほとんど怯えたような声を立てる那唖挫。
「何言ってるんだ。那唖挫だって、まだ欲しいんだろ?そんなに息切らして。」
当麻の手は那唖挫の胸の尖りからゆるゆると臍の方へ降りていった。
「でも俺が入れるのは怒るらしいし…ま、ちょっと下準備って奴?」
「下準備……?」
意味がわからず、那唖挫は思わず聞き返す。
その那唖挫の、半ば立ち上がったソレを、当麻はいきなりくわえ込んだ。
「な、何をする!そんなところ……!」
叫んだところで、勿論、当麻から返事がくる訳がない。
何しろ口が塞がっているのだから。那唖挫のもので。
「もう……なんなんだ、お前はぁ!!」
今にも泣き出しそうな声で那唖挫がわめく。
流石に本当に泣くわけにはいかない。涙をこぼさないために、眼を閉じた。
しかし、当麻は口と舌で那唖挫の急所を愛撫しつづけた。
襲いかかってくるヌメラな刺激。もう二度も続けざまに感じた、ソノ感覚。
いくら媚薬を上の口と下の口から入れられたとはいえ、自分の体の節操のなさに那唖挫は舌を噛み切りたくなってきた。
すすり泣きとも喘ぎ声ともつかない音を口から発しながら、快感を必死に耐える。
(天空…男を愛撫するのに、慣れている……)
耐えながらも、当麻の舌使いに気付く那唖挫。
考えてみれば、男の自分に媚薬を盛って突っ込むわけだから、多分、男相手は初めてではないのだろう。自分がそうであるように。
その慣れた口内性交の激しさに、那唖挫は性懲りもなく硬直していく自分を感じた。
「う…ぁあ……。」
今にも放ちそうな、その瞬間。
当麻が、口を離した。
「?!」
突然の寸止めに、那唖挫が思わず眼を見開く。
一体どうしたのか、と思っているうちに当麻はガラステーブルの上に放っておいた、ケーキのラッピングに使用していたリボンをつまんだ。
「な、何……。」
訳がわからず、戸惑っている那唖挫に向かい、当麻は実に嬉しそうな笑顔を向けながら、リボンをくるくると那唖挫のソレに巻きつけた。
「へ、へ、変態!!!」
「何言ってるんだ。男なんてみんな変態だろ。」
「……………!!」
何かもっと、当麻の臓腑を抉るような台詞を叩きつけたいのだが、状況が状況な上に、怒り心頭に発してもう何を言ったらいいのか分からない。
当麻は那唖挫を縛り上げると、そのままクルリと背を向けた。
「じゃ、伸呼んで来るから、そこでイイコで待っていてね。」
「伸………。水滸が……?」
「ああ、言い忘れていたけど、ケーキ作ってラッピングまでしてくれたの、伸なんだよ。先に俺が頂いてもいいって言うからやることやっちゃったけど、後は伸と二人で。」
「……………。」
頭の中でさえ言葉が抹消され、那唖挫はリボンをほどくことも出来ずに、研究室のドアに向かって去っていく当麻の背中を見送った。