「はは、気付いた?」
「一体、何を…。」
「前に那唖挫が、薬品調合の一種に媚薬作っているって話してくれただろ?そのデータ見せてって言ったら、パソコンに成分入力してくれたじゃない。それを参考に、俺なりに改良した奴。どう、効く?」
口ばかりじゃなく手も動かして、当麻は那唖挫の帯を剥ぎ取り、着込んでいた長着の前を完全にはだけさせた。
「こ、この、外道が!!」
「元妖邪の人にそんなこと言われたってなんともないです。」
ヘラヘラと笑いながら、当麻は那唖挫のぬめるように白い肌に鼻を押し付けた。
「離せ!変態!阿呆!外道!間抜け!三流!ボケ!」
思いつく限りの罵詈雑言を片っ端から叫びながら、那唖挫が何とか当麻から逃げようともがく。それをしっかり両腕で押さえつけて、当麻は上目遣いに那唖挫の顔を見上げながら胸元を舐め上げ、那唖挫の胸の尖りに軽く歯を立てた。
「はっ……ん……」
必要以上に感じてしまう己を制するように、那唖挫が唇を噛み締める。
その反応を楽しみながら、当麻はもう片方の尖りに手を伸ばして、指先で転がした。
「や……めぇ……っ!」
唇から出てくる言葉とは反して、那唖挫の体は明らかに快楽に順応していることを訴えていた。
小刻みに震える白い皮膚。眼鏡の奥の涙で潤んだ両の眼。
日頃の冷ややかで気まぐれで、人を食ったような那唖挫の姿を知る当麻にとってはたまらない表情であった。
もう我慢できずに下帯に手を伸ばす。
「嫌だ、そこは……!」
解き方は分からなかったものの、とりあえず力任せに引っ張り、那唖挫に苦しげな声を立てさせながら足元に下帯を引きずり落とさせる。
既に反応を示している那唖挫の雄が当麻の目前に現れた。
「うわ…すごい……もうヌレヌレ……。」
「言うな……!」
今にも歯軋りしそうな表情で那唖挫が当麻を睨みつける。
しかしその頬は朱色に火照り、荒い息を吐く唇は当麻のものとも那唖挫のものともつかぬ唾液に濡れていた。
当麻の指先が、那唖挫の雄に伸びる。
息を詰めてそれを見る那唖挫。
触れるかと思いきや、当麻は人差し指と親指をくっつけ、那唖挫のそれを指先で弾いた。
「つっ…。」
その鋭い刺激に那唖挫は思わず眼を閉じてうめく。
「かーわいーい。」
四百歳以上も年下にそんな台詞を吐かれて、屈辱を感じるが、薬の効果でもう口からは喘ぎ声しか漏れて来ない。
当麻はそんな那唖挫の全開になった着物と白衣の隙間を満遍なく触り始めた。
ところどころに大きな傷跡が残っているのは、やはり毒魔将として戦い続けてきた証か。
それを抜いても、キメが細かくぬめるようにすべっこい白い皮膚が、欲情の色に染まっている光景というのは視覚的にクる。
それを触ってみたいと思う衝動のままに、当麻は那唖挫の体をいじりまわした。
なで、つまみ、ひっかき、転がす。
その度に那唖挫はこらえきれずに細い体を捩じらせ、口から言葉とも吐息ともつかぬ音を発する。
汚れた白衣と、那唖挫の柳色の小袖が体の下で皺になるにも構わず。
「は……あっ……も、う………。」
切れ切れの、那唖挫の息の合間に、そんな言葉が挟まった。
「欲しい?」
「天空……っ。」
「どうして欲しい?」
那唖挫は口を手で抑え、当麻から顔を背ける。
一体、何を口走りそうになったのか。
当麻は那唖挫の上気した耳に唇を近づけた。
「自分の媚薬、飲んだ事あるだろ?研究熱心だもんな、那唖挫は。そのときと比べてどう違う?言ってみろよ。」
「馬鹿……抜かせっ……!」
笑う当麻の顔をひっぱたきたくても、腕が思うように動かない。
全身を駆け巡る快楽を理性で何とか押し留めるのが精一杯なのだ。
「参考にしたいんだけどなあ。なんてったって、媚薬は男の夢とロマンじゃねえの。那唖挫も分かるだろ?だから自分で作ってたんだろ?」
囁きかける当麻の声が耳をくすぐる。
それにすら感じてしまい、那唖挫は必死に息を殺しながらも肩をがくがくと震わせた。
「とりあえず、ここ触られるとどんな感じ?」
そう言って、当麻は那唖挫の敏感な部分に指を絡めた。
「ひっ……!」
どんなに我慢しようとしてもそんなことをされれば声が出る。それを押し殺そうとしたために、発した音は跳ね上がっていた。
「あー、やっぱりイイみたいだね。当然っちゃ当然だけど。」
そのまま当麻は那唖挫のその先端をくりくりとこねくりまわす。
もう肩だけではなく、全身を震わせながら、那唖挫は快楽に耐える。
強情な那唖挫の反応を楽しみながら、当麻は指を徐々に幹の方へとずらし始めた。
口を抑える手から漏れる、甘い吐息。音。
同じ男ゆえに、その部分をどう刺激すれば堪えるか、当麻も分かっている。
ポイントを抑えつつ焦らし、焦らしながら追い上げる。
「くっ…う、あぁ……っ!」
改良された媚薬の上に、もう三十を越した当麻の手指の動きで、那唖挫はあえなく放った。
鼻孔をくすぐる、独特の青臭い匂い。
「うわ…こんなにたくさん…。」
そう言って、当麻はわざと那唖挫の眼鏡の前に自分の手に放たれたものを見せつけた。
「………ッ。」
更に赤面して、那唖挫が顔を背ける。
「もしかして、たまってた?」
「うるさい、聞くな。」
もう声は出すまいと思っていたのに、安い挑発に負けて言い返してしまう。
言ってから、自分がかなり切羽詰った状態である事に気付いた。
通常なら、こんなに易々と放ちはしないし、この程度の攻撃に乗ったりはしないのに。
(天空の媚薬の…効き目か……?)
毒に関してはエキスパートの自分が、他人の作った毒・媚薬に陥落させられる。
その事態を考えて、那唖挫は言い知れない恥辱に唇を噛んだ。
「前の感度はいいとして、後ろはどうかな?」
軽い調子で当麻が言う。
その意味を察し、那唖挫は咄嗟によろめきながらもソファから立ち上がろうとした。
それを当麻は上から押してソファの上に巧みに転がす。
そのまま那唖挫の脚を持ち上げた。
「離せ!」
わめくものの、普段の十分の一も体に力が入らず、当麻に触られただけで鳥肌が立つような快感に襲われ、那唖挫はたやすくソファの上に四つん這いにされてしまった。
「貴様…後で覚えていろよ……!」
「へえー、一体、何してくれるの?」
そんなことをいいながら、那唖挫の脚からその上の部分を覆う白衣と着物をめくり上げていく当麻。
「うわ、本当に、体毛薄いんだな、那唖挫って。」
爬虫類みたい―――そこまでは流石の当麻も口に出さなかったが。
毛が薄く、しかも着物もしくは鎧に隠れて普段、日に当たる事のない那唖挫の白い脚は、爬虫類―――白蛇を思わせた。
知らないうちに生唾を飲み込みながら、当麻は那唖挫の着物と白衣を腰の上までたくしあげる。
そしてさらけ出される、奥まった部分に、濡れた指を伸ばした。